エッセイ

映画を見る、映画を感じる 〜いくつかのオススメ映画〜

私と夫は映画大好き人間だ。 暇さえあれば劇場に足を運ぶ。
金沢の街中に小さな映画館「シネモンド」がある(単館系の映画を週替わりでやっている)。
金沢周辺にはシネコンが5、6館、駐車料金は無料、大阪ほか都市圏とは異なり好条件で映画ライフが楽しめる。女性はもとより、シニアや夫婦50歳以上は優先されていて1人1000円。

今年に入り、私と夫はすでに40本以上の劇場映画を観た。
テレビやDVDを含めると70本くらいは観ていることになるか。

時間がある夫は観た映画の監督や役者、そして点数をつける評価表なるものを作った。
実は今年からはつけ始め、二人とも「60点」からスタートした。
ところが、である。「いい映画」に出会えばどんどん点数は跳ね上がり、4月終わりには「もうすべてが90点以上」という異常事態とあいなった。
つまり観る映画のすべてが高得点になってしまったというわけで、比較評価がまったくできない。
もちろん観る映画は私たちなりにかなりセレクトされている。
高得点になった理由の一部は今年の「アカデミー賞」にも関係している。
昨年アメリカで上映された映画、同賞にノミネートされそうな作品が目白押しでやっているというこもあるだろう。
結果として、5月に入りいったんその評価表のスタンダードを「60点」に引き下げた。

最近観た映画でおススメはたくさんあるがこんな感じかな。(もうこれは独断と偏見そのもの、念のため!)
「ザ・フユーチャー」
「塀の中のジュリアス・シーザー」
「もう一つのプレイブック」(今年のアカデミー賞主演女優賞)
「愛・アムール」(同賞外国映画賞)
「リンカーン」(同賞主演男優賞)
「ハッシュパピー」(同賞主演女優賞に最年少受賞)
日本映画でいち押しは何といっても「舟を編む」か。
私的には「鈴木先生」「すうちゃん・まいちゃん・さわこさん」「きいろいゾウ」なんかも好きな作品だった。
今の日本映画はかなりの確率で原作はコミック、それもこれも日本文化がコミック先行で進んでいるということなのだろう。

DVDもたまには観る。
TV、特にBSで映画はなるべく見る。
先日来夜中にあのロシアの超長編作品「戦争と平和」が数日間にかけてやっていた。 さすがにカラダがついて行けずあえなく途中リタイア。
DVDのおススメは旧作だが、なんといっても是枝裕和監督の「幻の光」。
今年のカンヌに是枝監督は「そして、父になる」を引っ提げ、見事カンヌ映画祭パルムドールと審査委員賞を同時受賞した。
そのほか「ミセス・リトル・サンシャン」「スラムダンク・ミリオネア」「カッコーの巣の上で」「ミスティックリバー」・・・。

私たちは日本映画も見るが、やはり外国の映画が好きだ。
ちなみに、ネットでのレンタルはとにかく便利、ほしいものが手に入る。ネットのレンタルショップはDVD1か月無料サービスがあり、それもお試しあれ。

最後に私の一押しオススメしたいのは「カミハテ商店」だ。
昨年すでに東京のユーロスペースで上映され、その後は基本的に自主上映で全国を回っている。
監督は山本起夫、京都美術造形大学の教員だ。
彼いわく、ある日ゼミの女子子学生二人が共同でストーリーを書いた、みてほしいと言ってやってきた。
読んでみたらなんだかとても面白い空気感があると思ったという。
それをベースに書き換え、手直しをし脚本を作りこみ〜、ゼミや大学の協力を得て作成したのがこの映画だという。
高橋恵子、寺島進ほか数人のプロの役者以外は京都美術造形大学の学生が出演・エキストラ、撮影地である隠岐の安土町の人たちがたくさん関わっている。 ロケ地はとても美しく、登場する人たちもとても自然というか、たどたどしくういういしい、とても可笑しく、悲しい、そしてまじめな映画だ。
シーンのコマわりや描き方がいい、是枝和弘さんの「幻の光」に似ている!と思った。
特に映像が暗い、内容も暗い!(笑)、長い引きのシーンが多いところ、後味は悪くないけど「身も蓋もない感じの映画」に仕上がっている。
監督いわく、「観客に親切じゃない、つまり観るものを置き去りにする」そんな映画だ。つまり、どのシーンもそのすべては観るものにあずけられていて、それでいいのだ!それがいいのだ!と。
ストーリーは、高橋恵子が演じる年老いた女性が自殺の名所で有名な「上終(カミハテ)」で、小さなよろず屋さんをしている。お手製コッペパンと牛乳を売っていて、自殺志願者は最後の最後にこの店に立ち寄り、コッペパンと牛乳を買う、そしてそれを手にして死に場所に向かう…という話。
高橋恵子が演じる女性は決して「自殺」を止めない。そして死を選んだ人たちが脱いでいった「靴」を拾い集めて家に持ち帰る。
店には自殺を志願する人々が入れ替わり立ち替わり出入りする。
死ぬ選択をしながらも、迷い、躊躇する人間たちがデリケートに描かれている。そして結果として死に行く人もいれば、生きて行かざるをえない人もいるという話だ。
音楽は谷川賢作(谷川俊太郎の息子)。
「福井県」という設定(実はロケ地は島根県隠岐)ということもあり、金沢で先行上映会が行われ、谷川さんと監督の舞台あいさつ、そしてそのまま近くの茶房で、谷川さんと地元の声楽家たちとのコンサートになった。
夜の時間はあっという間に流れ、謎めいた(腑に落ちない?!)映画の数々のシーン、音楽のそぎ落とされたプリミティブな音源、その余韻が、地元の方たちとの小さな出会いとともにあった。

映画ってステキ、面白い、世界が広がる、何かに誰かに必ず会える、それが映画だ。
私にとっては他人を知るツールなのかもしれない、別の世界を見るという意味で。