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今まで出会った女性たち・相談例

*ここに書かれているのは、本人の特定ができないようにアレンジしてあります。

えふちゃん --- DV・離婚

夫の激しい暴力に耐えかねて、まだ幼い二人の子どもを連れて、何度も逃げまわっては戻るという繰り返しをしていた。が、最終的に公的シェルターに駆け込み、そこで離婚の手続きをして、離婚にいたった。
初めて面接にこられたときは、妙に、物おじしない感じの方だなあと印象だった。よく言えば、はっきりしたものいい、社交的というか、とても緊張が高いから、こちらはなるべく彼女のペースに乗らないよう、ゆったり構えることにする。
彼女は30。彼女いわく、夫は見た目はとても素敵な人で、人からは「優しい人、いい人」で通っているという。結婚して数年の間に、何度か激しい暴力をふるわれ、警察を呼んだり、家を飛び出したりしている。ある日、仕事から帰ってきて、機嫌が悪いなあとびくびく不安に思っていたら、案の定、急にご飯のおかずにナンクセをつけはじめ出した。だんだん言葉の暴力がひどくなり、子どもを二階に避難させた。手元にあるモノを投げ出し、タンスや食器棚をゲンコツでなぐり、挙句の果てにバットで壊し始めた。子どもたちは怖がって、なきわめき、最初彼女は二階で子どもを抱きかかえて小さくうずくまっていたが、夫がお酒を飲み、寝たのを確かめて、夜中に子どもを連れ外に裸足で出たという。行くところがないので、とりあえず、近くの国道まで出て、深夜までやっているファミリーレストランで明け方まで過ごしたという。
「このところずっと靴を足元に置いて、時には履いたまま寝ていました」という。子どもたちもおそらく緊張につぐ緊張を強いられていたことだろうと思うと本当に切ない。「今はDV法ができたから、近くの警察にいって、何かあったらすぐに来てもらうなり、パトロールをしてもらうなり、きちんと話をしておいたほうがいい」とアドバイスすると、いままでも何度か警察に相談にいったこともあるという。しかし、そのほとんどは空振り。以前は、警察は民事不介入、家庭のことは家庭の中でのことといった考えがあったから、夫からの暴力は単なる夫婦けんかくらいにしか対応してもらえなかった。今はDV防止法もでき、暴力は身体暴力だけにとどまらず、精神的な暴力、言葉の暴力や、経済的な暴力、社会的な暴力などもDVに含まれるようになっている。
彼女の話を聞くと、警察の助けを求めるのはあまり現実的ではないなあと思わざるをえなかった。ある時、彼女は思いつめて、一度近くの橋から飛び降りようとしたことがあったという。警察が介入することになり、暗に「それは手の込んだ狂言でしょう」といった言い方をされ、非常に傷ついたという。警察に何を言ってもわかってもらえない、通じないと思い、理不尽さが残り、人を信じられなくなったというのだ。
実際には毎日毎日暴力があるわけではない。暴力がないときはどちらかというと優しい穏やかなイメージを与える人だという。ところが、何かのきっかけで、暴力はときと所を構わず起る。妻のほうにその予兆なりが確かなものとして分かればある程度阻止もできるのだろうが、なにせ夫の気分ひとつで爆発する。たいがいは部屋がめちゃくちゃになり、最後は彼女が片付けることになる。だいたいのパターンだ。
暴力はハネムーン期→怒りが蓄積される時間→怒りが爆発するとき→ハネムーン期→といった具合にサイクルがある。暴力が行使されたあと、夫は急に優しくなったり、反省しているという態度にでる。「君がいなければ僕は生きていけない」とまで言わしめる。だから、妻は「まだやりなおせるかもしれない」と勘違いする。あるいは「やぱり彼は私を愛してくれている」と思う。実際に、女性が周到な準備をして家を離れるということは至難のワザだ。逃げ出すことを想定して、準備して待つということがなかなかできない。女性のほうにももう一度治るかもしれない、心を入れ替えてくれるかもしれない、本当はあんないいパパなんだから・・・という期待もある。ある意味、彼女自身が彼の暴力を支えるような構図になっているのだ。
だから、カウンセリングも次の逃げる、つまり行動するチャンスを待つしかないときがある。ある日、急に私の職場に電話が入り、今ある町のど真ん中で、夫とカーチェイスになっているという。「え〜、どういう意味?」と聞くと、夜遅く夫が帰ってきて、夜中から暴力が始まり、朝方まで続き、とりあえず子どもたちを学校に送りだして、夫がまだ眠ているのを見計らって家を出てきたという。それから間もなく夫から執拗に電話が入り、居場所が分かってしまった。その後夫に車で追いかけられているという。
「もうダメですね、できたらシェルターみたいなところに逃げたい」という。「以前教えてもらっていたところに行こうと思うんですけど」と。こちらからシェルターのほうに連絡を入れて事情を説明しておくから、あわてないで夫に見つからないようにすぐに行くようにつたえた。 その後、子ども二人と一緒にシェルターに一時避難した。そこで職員の方ほかの指導を受け、離婚手続きを自分自身で取り、無事に別れたという話だ。なかなか大変な状況であったのは間違いない。