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今まで出会った女性たち・相談例

*ここに書かれているのは、本人の特定ができないようにアレンジしてあります。

みさきさん --- パニック障害

「駅まではよかったんですが、電車に乗ろうとしたら、心臓がどきどきしてきて。先週はカウンセリングに来れませんでした」と言う。電車に乗るときは「快速急行」ではなく、「普通電車」に乗り、しんどくなりそうになったら、途中の駅でいったん降りて一休みするという。パニック障害は今ではめずらしい病気ではないし、比較的よくきく薬も出ている。
話も理路整然としていて、とてもしっかりしたいい感じの女性である。夫と子ども三人との5人暮らし。夫はサラリーマン、子どもたちは浪人生と高校生と中学生。受験が続いたりとこのところ結構大変だったというが、まあ、ごく普通の家庭、家族といっていいあろう。この半年くらいのことらしい、なんとなく疲れやすくなり、心拍が気になったり、パニック障害になったのは。
話は彼女の人間関係全般に及んだ。一言でいうと、そつなくいろいろなことをこなす人、こなせる能力がある人なのだろうなあという印象だ。いままで子育てを中心に、幼稚園ママとの付き合いやPTA活動、そのほかミニコミ紙を友人たちと作ったりとかなりアクティブに毎日の生活を送ってきた。夫とはまあまあ円満だという。
確かに思春期の三人の子育ては大変だろう。「一人ひとり個性が違って・・・みなそれぞれに自己主張しますし・・・」と彼女は浮かない顔をする。浪人生は今のところ放っている。高校生の女の子はときどき高校に行きたくないと言いだしはじめ、今はおけいこごと夢中だという。中学生の男の子は、彼女の理解を超える!なかなか個性的な子だという。子どもを育てたことのある人ならわかるだろうが、他人の子どもなら、「個性的でいいじゃないの」「そのうち好きな道がちゃんとみつかるから」・・・なんてわかったことを言われたりする。サラリーマンの夫もどちらかというと、「なんとかなるさ」タイプだという。ときどき彼女はその呑気さに腹が立つ。
どうも彼女の両親の話がでてきた。会社員の父親と専業主婦の母親のごく普通の組み合わせ、彼女は長女で、下に弟が二人いる。父親は真面目な人で、母親はなんでもきちんとこなす人だという。家事全般、子育て、近所つきあいほか、手を抜くことをしないでやっていると。もちろん両親には感謝しているし、自分もできたら母親のようなお母さんになりたいと子育てをしてきましたからね、と打ち明ける。「そつなくやること」「失敗しないこと」「がんばること」などを暗に自分に課してきたのだろう。人の目がやたらに気になり、評価がいいと有頂天になり、評価が低いとすごく落ち込むという極端な反応になる自分を責める。結局、「私、自信がないんですよね、なにごとにも」という。いや、決してそうではない。客観的に見れば、ずいぶん能力が高く、価値観もしっかりしている、何がよくて何が悪いのか、そして、何が大事なのか。人から、周囲から何を求められているのか、そういうことは自分は瞬時に判断し、よく分かってしまうという。「でも、自分のこととなると、なんだか自信がないままきました。いつもこれでいいのかしら」と。
彼女の人間関係はきれいに整地された土地に整然と種まきがなされているといったイメージだ。深くかかわる人が特にいるわけではない。争いはあまり好きではない。まあまあ仲の良い友人はたくさんいる。関係もそれなりに良好かつ円満だ。しかし、彼女自身がオープンマインドに付き合えている人は案外少ないと話してくれた。いつも少しばかりの緊張と何かを常に期待されていて、それに添おうとする、失敗できない感じがつきまとっているので窮屈に思うことも多いという。そして何か齟齬が起きると、簡単に乗り切ることができなくなり、傷ついてしまうことが多い。
両親のこと、自分が長女としてのポジションにあった、波風の立たない家庭に育ち、誰もが認めるいい子だったことなど、自分自身のことのあれこれに気づき始めていた。「もっと気楽にやってもいいんですよね、時には失敗もしたらいいし・・・、なんとかなることも多いですしね」。そして「子どもにも結構きちんとしなさいって不自由な思いをさせてきたかも・・・」と。