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今まで出会った女性たち・相談例

*ここに書かれているのは、本人の特定ができないようにアレンジしてあります。

てんこちゃん --- 離婚・女性問題

順風満帆な結婚生活だとだれもが思っていた。夫も、そうかもしれない。夫はエリートサラリーマン。いわゆる企業戦士。彼女は専業主婦、子どもが4人。小さいながらも赤い屋根の家もたてた。二人目の子どもが大きな病気を持っていることがわかり、たびたび入退院するようになった。夫は非常に忙しい部署で、たくさんの部下を持っていた。朝7時半には家を出て、帰宅は早くて10時、次の日になることもしょっちゅうだった。
夫も子どもが嫌いではない。でも、時間が、かかわる時間がとにかく足りない。土曜、日曜、そして年末も、子会社が製造に手が回らないとなると応援に行く、海外出張も増えた。彼女は病気の子どものことを案じながら、ほかの三人の子どもたちを保育園、そして学童保育、近所の方たちの応援でなんとか乗り切っていた。手術をすることになり、そのための準備が始まった。あるとき、こめかみに痛みが走り、口が開きにくいことに気づいた。顎がカクカクと音がする。気がついたら、体重も10キロ近くも減っていて、夏場貧血がひどくなり、立ちくらみを起こすようになった。手術はうまくいった。もちろん夫も心配して、手術には立ち会ってくれたし、病院にはほとんど毎日きてくれた。
しかし、である。だんだん彼女の気持ちは彼から離れていることに気づいた。決して悪い男ではない。まじめで、心配をかけたり、悪いことをするわけではない。女性がいるわけでもない。お給料は十分すぎるほどある。読書が趣味で、社交があまり得意ではない、物静かな男だ。
彼女はだんだん感じ方や考え方、価値観が少しずつずれていくのを感じ始めるようになっていった。仕事しかしない夫、仕事をすべてにおいて優先する夫に怒りを持つようになっていた。怒りは単純に子育てをしてくれないからではない。どう私とかかわろうとしているのか、二人でこれからの人生をどう築こうとしているのかといったことがまったく語られることのないまま、時間が過ぎていくことに対して不安や物足りなさを感じるようになった。
彼は順調に出世し、どんどん仕事の重圧が増していった。いっとき、会社に行けないうつ的な状態になったこともあった。それでも、仕事が優先だった。彼女は、彼にとって私はなんなんだろうって思うと、虚しさが増していった。そのころ、彼女は女性センターほかで学習する機会を得た。フェミニズムとの出会い。今置かれている状況が、夫とのかかわりが、彼女の息苦しさがよくよく理解することができた。女性が本来持っている力をもっと発揮していいんだ、ありのままにいる権利があるんだ、怒ってもいいんだ・・・いろいろなことに築いた。目からウロコ状態。社会や政治、そして経済を動かしている大会社のシステムやからくりがわかった。
夫と妥協するつもりはなかったが、なんとか子どものためにこのままでやっていこうと思ったこともあった。しかし、どうしても感情的に夫が許せないと思うようになった。自分の人生だもの、たった一度きりの人生だもの、自分で自由に切り拓きたい・・・、そういう思いがフツフツと湧き上がってくるのを感じた。そして女性たちとの出会いも大きな力になった。
ある時、夫に彼女ができたことに気づいた。もう夫は関係ない人と思っていたが、落ち込みはひどかった。しかし、この機会を逃すことはない。離婚したいと申し出て、すんなり二人の間で決まった。しかし、子どもが4人、養育費や慰謝料、そして親権をめぐって条件がなかなか決まらず、お互い弁護士を立て、攻防が始まった。夫は超忙しいということを理由に、調停をこばんだ。なんとか話し合いで解決しようと弁護士経由の書簡のやりとりをしていたが、彼女は抑うつ状態が強くなっていった。そして家事や仕事ができなくなり、落ち込みが激しくなり、2回入院することになった。その後、条件は折り合いがつき、離婚が正式に決まったが、彼女のうつ状態は悪化し、長く病いと闘うことになった。
夫婦関係がよくない、離婚前後、カラダを、そして精神的に不安定になる女性は少なくない。世間体、経済、職場、住居、子どものことなどなど、女性がシングルマザーになれば抱えきれないほどの問題を抱えることになる。当然、子どもへのリスクも指摘されることも多いし、不安の中での新しい人生の一歩は過酷な道のりになる場合が少なくない。
離婚するにはエネルギーが必要だ。もちろん体力も気力も。そしてお金もだ。準備をしっかりするにこしたことはない。多くの人、そして公的な支援を受けながら、離婚後のことをしっかり考えた上で、「するかしないか」結論を出したい。