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今まで出会った女性たち・相談例

*ここに書かれているのは、本人の特定ができないようにアレンジしてあります。

けいこさん --- 離婚・女性問題

夫は父から譲り受けた事業を大々的にやっているという年配の女性がこられた。夫とは二人暮らし。子どもたちはそれぞれの家庭を持っている。それなりの家に住み、夫からの毎月の生活費で生活をしている。身なりもあかぬけているから、それなりの生活をしていらっしゃるののだろう。ただ、もうこの先の人生短いから、夫と離婚し、自由やっていきたいというのが彼女の切なる願いだった。
不景気のせいもあり、このところ事業がかんばしくないらしい。社内で秘書的な役割をしている女性と長年不倫関係にあることに彼女はずいぶん以前から気付いている。夫にも何度か問い詰めたことがあるが、「そんなことはない!」とシラを切り、認めようとはしないまま時がたったいう。何十年にもわたって、自分以外の女性と不誠実な関係を続け、それを隠し通そうとすることにもう我慢の限界がきたという感じだ。
彼女にはいくつもの確信があった。しかし、それがはっきりとした、たとえが裁判所に出せる証拠になるようなものではなかった。彼女はかなりの高額なお金を出して、探偵を雇った。案の定、短期間に不倫関係の証拠が取れた。写真も添えられた簡単な説明書が手にしたが、納得がいかなかった。さて、どうしたものか。
彼女は離婚したいと望んでいた。もう夫との生活に無駄な、むなしい時間を使いたくない、これからの世話もしたくない、できることなら自分の人生を取り戻したい・・・という強い思いが伝わってきた。そして、夫に積年の恨みを晴らすために、一矢報いたいというリベンジを果たしてすっきりしたい、そんな気持ちも大きかった。
ただ、離婚は条件さえ折り合いがつけば、あまり問題なくできるだろう。子どもも完全に育っている、財産分与、慰謝料もそれなりにでるだろう。しかし、生活レベルは確実に落ちることは覚悟しないといけない。
弁護士さんに最大限どれくらいの慰謝料がとれるのか、財産分与はいったいどれくらいになるか、相談に行くことにし、同行した。民事を主に扱う女性の弁護士さんは、離婚するかしないかはあなたの決断ですが、「あまり離婚をお勧めしません」と明言された。むしろ「このままのほうがいいのでは」というニュアンスだ。慰謝料ほか思ったほどとれるものはなさそうだということと、離婚したら今の生活のレベルをかなり落とすことを覚悟しなければならず、これからいつまで続くかわからない老後のことを考えると、今のあなたの生活状況が保たれることのほうがメリットがあるのでは、ということだった。
もし自宅をもらえなければ、今から住居を探し、仕事をするにしても、年齢がネックになることは間違いない。いろいろなことを考慮し、「ソンかトクか」とシンプルに考えると、このままの生活を維持しながら、夫とは距離を置き、もらえるものはもらい、やることは最低限やり、ご自身本位の生活を自由に満足いくものにしていくほうがいいのではないかというのが弁護士さんの意見だ。私も「離婚もありか」と思って同行したが、弁護士さんの確信にみちた物言いに、納得するしかなかった。決して感情的になってはいけないのだ! リベンジをしても、彼女の思いはある程度すっきりするかもしれないが、夫には大した深手にはならないかもしれない。
彼女は生活の質を落とすことはあまりにもリスクが高い。このまま夫のあれこれを見て見ぬふりをして適当にやりすごし、怒りをコントロールし、夫を壁にかけた絵くらいに思えば、今の生活が保障されるのだ。
今からの老後のほうがむしろ蓄えがなくてはやっていけない。長年、「いい妻いい母いい嫁」役割を果たし、自分自身を生きるという発想、視点を持ち得なかった女性が、急にひとりで生きていくというのは、たくさんのエネルギーと何かを思いきって捨てる覚悟が必要だ。